今回も医療人として働く中で得た経験を書く。
これは若手に読んでほしいというわけではなく、当時の状況から、「自分でバリューを生み出してお金をもらう」という当たり前のことを今後の人生で意識しようと私が思った思い出だ。
(あくまで自分が感じたことがメインで、事象が倫理的に正しいかどうかは触れない)
薬剤師のお仕事
これは一般的に認識されていないが、薬剤師の仕事は処方箋に書かれている薬を出すだけではない。その状況でその患者がその薬を飲むことに問題はないかを判断する必要がある。(これが一般社会で認識されていないのは、完成した物しか患者に提供しないからだと思う。)
ここでその薬の使用に疑義があると、Drに照会し、誤りでないか確認したり、さらに良い薬や剤形を提案したりする。
この場面が薬剤師の職能が発揮されるべきだと思うが、仕事を果たしたということで点数(病院や薬局が貰っているお金の一部)が加算される。医療費は3割負担等であるので、当然、患者にも負担が発生している。
あるべき医療が患者に提供されるという点で患者にはベネフィットがあり、納得感がある程度は得られるかと思う。
救急での薬剤師
現在の一般的な病院ではどうかは分からないが、当時私がいた病院では、救急医療に薬剤師がどうやって関与しようかという段階だったと思う。
救急に対応する薬剤師は当番制で決められ、私も救急の患者に処方される薬を確認する機会があった。
その日、救急の処方に対応していたのは私一人だった。
どこかで事故等があり、重体の患者が病院に運ばれてきた。患部の写真も撮っており容態は悪そうだ。カルテに記載されている内容から、もう永くない(治療ができない)ということもうかがえる。
きっと救急車が来るという連絡を受けて、すぐに処方できるようにしていたんだと思う。
ガスター静注。
薬剤師の人たちなら投与予定の患者のeGFRで問題ない投与量が確認するはず。
私も確認し、多いことが分かった。
そして薬剤師として疑義照会し、投与量も減量してもらった。
救急の現場では、それが単純に腎機能に直結するわけではないし、一回の投与でどうこうって考えるよりまずは患者に投与すべきということは分かっていた。何より、永くない患者に投与されないことも分かっていたが、保守的というか、保身のために確認してしまったことを強く覚えている。
仕事のバリュー
個人的に問題と考えているのはここから。
疑義紹介の点数を取るかどうかである。
私は照会しているものの、点数は取らなかった。投与量を変更しても投与されることはなかったからで、倫理観というものが私をそう動かした。
だが、後ほどそれを確認した上司が、「なぜ取らないのか」と詰め寄った。
私は謝ることしかできなかったが、未だに取らなかったことは間違いではなかったと思っている。
もちろん考え方の違いはあると思うが、提供するサービスに応じて対価をもらうべきであり、その時のサービス(疑義照会)は、患者にとってどうでも良いことだったと思う。
私はバリューを提供できなかった。
その時に、もっと胸を張ってお金をもらえるようになろうと誓った。
私が会計士を目指した背景になっているかもしれない。